公開: 2021年4月25日
更新: 2021年5月22日
終身雇用制をとり、年功制の賃金体系を採用している日本社会の企業では、同じ作業に従事している従業員でも、その従業員の間に、学歴や勤続年数の違いがあれば、支給される給与額にも差が生じるようになっている。これは、個々人の給与が、職務の内容で決まるのでなく、学歴と勤続年数で決まるからである。
一般的に、初任給は、学歴によって定められており、入社時の学歴が、中学卒、高校卒、専門学校卒、大学卒であるかによって違っている。また、入社後の昇給額も、学歴と入社後の勤続年数によって決められている。このとき、従事する職務については、ほとんど考慮されない。ただし、職位が上がると、それが昇給額にも反映される。
正規社員の給与は、このようにして決まるが、非正規社員の場合は、採用時の契約で、給与額が決まっている例が普通である。そのため、非正規社員の場合、年功は給与に反映されない例が多い。この違いが、正規社員と非正規社員の間の賃金の格差を生む結果となっている。就職氷河期に非正規社員として働き始めた労働者は、正規雇用にならない限り、同じ仕事に従事していても、正規社員との給与格差がなくならない。
同一労働同一賃金制とは、同じ仕事に従事している社員は、企業内での勤続年数や、正規雇用か非正規雇用かの別に関係なく、担当している職務の内容と、その職務を遂行する能力に応じて、給与が支払われる制度である。これは、終身雇用制を採用する日本企業が実施している、賃金制度とは違っており、むしろ、職務記述書に記載されている職務の内容で給与を決定する、米国社会などの給与制度に近いものである。
新しい労働者会、濱口桂一郎、岩波新書、2009